横山秀夫ワールド: 警察小説 アーカイブ

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2009年1月 3日

臨場(2)

横山秀夫「臨場」

終身検視官の異名をもつ人物の
短編集です。

4.餞(はなむけ)

退職まであと4日の刑事部長。
女殺しと言われ、女性にかかわる事件は、
ほとんど解決してきた。

そんな時期に、また事件が起きる。
やはり、女性が殺された事件。
未決のまま退職してしまうのか、
という心配ももたげてきたが、
「終身検視官」倉石のおかげで、
またもや、スピード解決。

解決していないのは、
毎年のように来ていた年賀状の主が
分かっていないこと。
それが、今年になってこない。

警察官にでもなれば、
更正した犯人やら、お礼参りやら、
いろんなハガキが来るもの。
そうだとしても、送り主の見当がつかない。
差出人には、「霧山郡」という記載しかない。

退職間近に、1つの決心をした。
倉石に、霧山郡エリアで、
この1年間になくなった変死体はないか、
と尋ねた。そこから、少しずつ明らかになっていく。

警察小説とは言っても、
いろんな側面から書けるもんだなぁ、
と改めて感じさせられます。

5.声

一人の女性刺殺体。
周囲には、「死ね」「死ね」と
書かれたFAXが散らばる。

事件性も考えられるその現場で、
倉石が判断したことは、自殺。

彼女の生い立ち、職場を巡る、
ストーリーが展開されていきます。

この本の中では、
一番つまらないストーリーに
思えました。

なんでだろう...?

6.真夜中の調書

DNA鑑定、血液型鑑定で
犯人を絞り込んでいく。

そこには、血液型による親子鑑定、
の神話を覆す事実があった。

B型とO型の親から、
A型が生まれる可能性がある。
それによって明らかにされた、
本当の犯人。

血液型だけでは鑑定出来ない事例が
あることを、この本で知りました。
でも、ホントなのかなぁ...

よく分からない。

7.黒星

倉石の元部下の女性が、
自殺したと思われる現場にて、
倉石が判断したのは「自殺」。

そして、事件性を確かめるために、
多くの刑事が聞き込みに出されることになった。

そこで調べようとしたことは、
何だったのか。
亡くなった女性の元同僚が、
倉石の本音を見い出そうとした。

死体にあった、不釣合いなピンクの口紅。
それは何だったのか。

自殺という判断は、初の「黒星」となるか。

人間模様の見えるストーリーです。

8.十七年蝉

17年ごとに、事件を起こしている、
と判断した倉石。

そんなわけがないと言う上層部。

17年といえば、
時効をすぎてしまい、
担当刑事たちも、
バラけているから、
見落とされやすい。

倉石が見い出した共通点は何だったのか。
そして、そこにこだわって、終身検視官を
続ける倉石の本心は?

ラストにふさわしいストーリーだと思いました。

2009年1月 1日

臨場

横山秀夫「臨場」

終身検視官の異名をもつ人物の
短編集です。

1.赤い名刺

検視担当の調査官心得一ノ瀬は、
終身検視官の異名をもつ倉石について、
検視の術を学んでいた。

1つの死体に出会い、
それが過去に自分と
不倫関係にあった女性であることを知り、
それによって、自分が容疑者リストに
あげられることを恐れた。

そんな最中、倉石から
「お前が仕切れ」
と言われる。

心の葛藤を覚えながら、
検視を進め、下した判断は、自殺。

しかし、あとになって、
心にひっかかることが出てくる。

検視官という作業だけで、
色んな情報を拾って、捜査に大きな影響を
与えるんだな、っていうことを初めて知りました。

うーん、なかなか、すごい仕事だ。

2.眼前の密室

新聞記者が取材のために、
県警本部の官舎を見張ることになる。
取材ターゲットの係長が帰ってくるのを待つが、
なかなか、帰ってこない。

近くには、ラブホテルが建っているために、
上司の奥さんとカップルを演じて、
社内で張っていた。

殺人事件は、その時に、その官舎で起きた。

自分たちがずっと張っていたために、
容疑者と呼ばれる人間が、
出入りした気配はない。

密室殺人か?

しかし、自分たちがずっと見ていた、
というところに、ヒントが隠されていた。

なかなかない視点のストーリーですね。
横山秀夫さんは、ホントに、警察事情と記者事情を
知っておられる、という気がします。

3.鉢植えの女

自殺と思われる事件が、
ほぼ同時期に発生。

終身検視官「倉石」の能力を、
それぞれの現場で、
一方は部下が、もう一方は上司が、
試すような形となる。

果たして、終身検視官の見立ては、正しいのか。
それとも、他と変わりない検視官なのか。

「やはり、ダイイイングメッセージってやつでしょうか」

「35年サツ官をやってるがな、
 死体がそんな洒落たシロモノを残したことはねえ」

というセリフが、印象に残りました。

たしかに、考えてみれば、
それもそうだな、という気がします。

殺されたとかなれば、
私は死ぬのか、みたいな感情に占められて、
メッセージを残すことに気が回るとは、
思えない。

もちろん、まったく否定することもできませんが、
この言葉も、現場を踏んでる横山秀夫さんの
発想から出てくることだろうな、という気がしました。

2008年11月10日

震度0

横山秀夫「震度0」。

阪神大震災の朝、
一人の県警幹部が失踪した。
蒸発か?事件か?

錯綜する思惑と利害、保身と野心、
激しい内部抗争を背景に、県警幹部6人の
「密室劇」。

横山秀夫ファンには、
好みの分かれる作品のようです。

タイトル「震度0」が、すごいくいい気がします。

「震度0=何も無かったこと、にするにはどうすれば良いのか」

に終始する幹部たち。

組織の嫌な面を、存分に表現してくれます。
組織にはからんでいたくないなぁ、と思わされます。

ただ、ラストについては、
そういう流れになるしかないんだろうなぁ、
という気はしますが、なんかスッキリしない。

好みの問題かもしれませんね。

原則とはちょっと違った映画もあるようですから、
見てみたいものだと思います。

2008年10月29日

締め出し

横山秀夫「深追い」の中の短編。

3年間の交番勤務を終えて、
少年課への配属が決まり、
むくむくと湧き上がる黒い感情があった。

街の不良どもを締め上げてやる。
この絶対的に優位な立場で。
しかし、現実は違った。
連中は大人を恐れない。ナメ切っている。
警察官と言う立場から声を荒げれば上司が割って入る。
手でも出そうものなら弁護士が飛んでくる。
少年法の手厚い庇護の囲いの中で、
ヘラヘラ笑っている連中に、イライラする日々。

そもそも、警官になろうと思ったのは、
中3の秋に、札付きの不良だった「S」に、
彼女の前で恥をかかされたこと。

その時から、強さに飢えて、ここまで来た。
しかし、事件が起きても、事件現場から
遠いローラー捜査ばかりで、締め出される。
ある情報が手に入った。これで転機が来るのか?

39ページの短編ストーリー。

2008年10月27日

訳あり

横山秀夫「深追い」の中の短編。

上司に反発したばかりに、
突然の異動で今のポストとなった警務係長。
今やらなければいけない仕事は、
ボイラーの復旧、退職する老巡査長の職探し。

出世街道を進んでいる同期から、
本部へ戻るための手柄話を持ちかけられる。
出世の約束された25,6歳のエリート課長の身元調査。
老巡査長、自分を異動させた上司、
そして同期、エリート、自分を照らし合わせて、
警察官という人生を考えながら、
日々の仕事をこなしている。

警察官も、サラリーマン。
そんな気持ちを感じさせる話です。
大変だなぁって。

38ページの短編ストーリー。

2008年10月23日

引き継ぎ

横山秀夫「深追い」の中の短編。

泥棒専門の刑事「泥棒刑事」。
親子2代に渡って、泥棒刑事として
働いている。しかし、
検挙推進月間だというのに、
まともな泥棒はおろか万引き1匹すら
捕らえていない。

署長には責められ、
隣りの署からは、留置場がいっぱいになったから、
貸してくれなどと、屈辱的な依頼が来ている。

ターゲットは、刑務所から出てきたばかりの
ベテラン泥棒と、若手泥棒。
しかし、ベテラン泥棒の方は、
「引退します」などと全国の刑事に
手紙を送ってきた。

そんな折、泥棒事件が発生。
その手口は、ベテラン泥棒の手口そのもの。
また動き出したのか。

同じ署のなかでも、競い合いがあるなかで、
はたして、事件の犯人を捕まえることはできるのか。

泥棒も職業だとすれば、
いろんな技があったりするもんなんですね。
その特徴で、犯人を絞り込む。

同じ警察の中でも、競争ゆえに、
情報の共有化が行われないとすれば、
犯人逮捕が遅れたりすることもあるんじゃないだろうか、
なんて考えました。

37ページの短編ストーリー。

2008年10月22日

又聞き

横山秀夫「深追い」の中の短編。

15年前に溺れた小2男子を助けようとして、
二人の大学生が救助に向かった。
しかし、一人は高波にのまれ、
もう一人と、少年だけが助かった。

その少年は、15年間、
その亡くなった大学生の実家に、
「法事」として訪問している。

自分の親からは、
「救われた命」として圧力をかけられ、
亡くなった親からは、
亡くなった大学生の思い出話を毎年
聞かされる。

こんな行事がいつまで続くんだろうか、
と思った矢先、警察の鑑識係になっていた少年は、
事故の1時間前に撮影されたと言われるスナップ写真を見て、
あることに気づいた。毎年見せられていたが、
それまでは気づかなかった、その写真。
「苦しんでいたのは、自分だけではなかった。」

鑑識係が主人公という設定ですが、
何か事件が起きるわけでもない。
しかし、引き込まれます。
そして、こういう話もあるもんかぁ、
と思わされる。やっぱり、面白いです。

36ページの短編ストーリー。

2008年10月20日

深追い

横山秀夫「深追い」の中の短編。

「コンヤハ カレー デス」
事故死した夫のポケベルにメッセージを送り続ける妻。
何のため、誰のために?
過去にスピード違反車を追いかけ、
「深追い」というレッテルを貼られてしまった交通課主任が、
そのポケベルをきっかけに、また深追いをしてしまう。
その妻は、以前に交際したことのある同級生だった。
彼女にポケベルを返そうと思い会いに行くのだが、
なかなか、きっかけがつかめない。

警察組織のなかでは、また、
深追いをしている姿に受け止められている。

なぜか、返すタイミングがつかめない。
そして、次第に、真相が分かってくる...

45ページの短編ストーリー。

2008年10月16日

モノクロームの反転

横山秀夫「第三の時効」の中におさめられている短編。

一家三人刺殺事件が起きた。
5歳の子供も巻き込まれたことに、
捜査一課長は、犯人の逮捕に全力を注ぐべく、
1班と3班を、この事件に割り当てた。

いつもなら、
発生した事件の順に、
1班、2班、3班と自動的に
事件が割りふられていく。
しかし、今回は、油と水くらいのタイプが違う班を、
同じ事件に割り当てた。

コンビネーションを心配する刑事部長。
競り合えば、1+1が3にも、4にもなると期待する捜査一課長。

早速、現場押さえ、参考人押さえから、
二つの班が競り合って始まる捜査。

それぞれの班が、有力な情報に迫りながら、
分離している状態。事件は解決に向かうのか?

なんか、競り合うストーリーって、
けっこう面白く感じますね。

「第三の時効」の中では、
けっこう面白いストーリーだったと思います。

60ページの短編ストーリー。

私にとっての面白い順位。
1.第三の時効
2.モノクロームの反転
3.密室の抜け穴

2008年10月15日

密室の抜け穴

横山秀夫「第三の時効」の中におさめられている短編。

山に捨てられた死体から、
割り出された容疑者は、
暴力団関係の人間。

警察組織内部の関係上、
強行犯捜査係とはいえ、
暴力団対策課を無視して、
捜査を進めると、
あとあと問題が生じる。

そこで、暴力団対策課の人間を3名呼んで、
マンションの出口をすべて固めた。
容疑者がマンションに入ったのを確認した後、
出てきたところを捕まえる予定だった。

しかし、待てども待てども、
出てこない。踏み込んだところ、
容疑者の部屋は、もぬけの殻。

どういうことだ?
責任の所在を突き止める会議が開かれた。
何か、おかしい。この会議を招集したのは誰だ。
容疑者は、どこへ消えた?

警察っていうものを、
よく知っているなぁと思わされます。

47ページの短編ストーリー。

2008年10月12日

囚人のジレンマ

横山秀夫「第三の時効」の中におさめられている短編。

捜査一課長の苦悩小説?

捜査一課には、3つの班がある。
どの班長も、優秀な刑事。
解決率がほぼ100%。

3人それぞれの人間性に窮屈さを感じながらも、
彼らの能力に舌を巻く課長。
彼らとの会話は、上司としての指示というより、
どこかしら伺いをたてているような感じ。

囚人のジレンマを利用した捜査を見ながら、
課長自身にも、班長らとのジレンマが見えてくる。
しかし、彼らにも見られる情を感じたりもする。

正直、ちょっと退屈といえば、退屈な感じです。
捜査の第一線というより、それを背後から見た描写
のせいでしょうね。

50ページの短編ストーリー。

2008年10月 8日

第三の時効

横山秀夫「第三の時効」の中におさめられている短編。

夫を殺して逃げた幼なじみは、
自分の娘の父親でもあるという複雑な事情。
その殺人事件の時効が、近づいていた。

犯人は、娘のことを思い、
時効が成立すれば間違いなく、
電話をかけてくると読んだ警察は、
亡くなった男の妻とともに、
電話を待ち、逆探知しようとしている。

第一の時効には、電話はなかった。
犯人には
7日間の海外渡航の事実があり、
時効がさらに7日間延びることを知っていたのだ。

そして、その第二の時効が近づいてきた。
そこには、犯人、妻、警察にも気づかない罠があった。

時効というものが、
いろんな理由で停止することを知るとともに、
警察っていうのは、事件の裏側も読めなければ、
犯人に辿り着けないんだなぁ、っていうことを
知らされました。

もちろん、フィクションのストーリーではありますが。

49ページの短編ストーリー。

2008年10月 7日

沈黙のアリバイ

横山秀夫「第三の時効」の中におさめられている短編。

「沈黙のアリバイ」
現金集配車の襲撃事件。
絶対にクロだと思われた犯人の取調べのために、
人選ミスをしてしまい、取調べは長期に及んだ。
それに加え、犯人は、カウンセラーを目指しただけに、
取調官の心を揺さぶり、脅迫されて自白したような状況をつくり、
調書はできあがったものの、裁判で、いきなり無罪を叫んだ。

そして、アリバイはある、と。
しかし、そのアリバイは、確かめようのないアリバイ。
シロとも、クロとも、断定できない状況において、
犯人と弁護士の策略が進みつつあった。
どうなるか?

取調官の能力に応じて、
「落ちる」こともあれば、
「落ちていない」こともある。

刑事も1つの職業だから、
その能力にはいろいろなレベルや経験値が
あるのだろう。

こんな内情を知ってくれば、
あるいは、本当の部分があるとすれば、
警察っていう職業も、どこかしら、
無駄な部分があるんだろうなぁ、って思えてきます。

もちろん、不要とかの意味でなく、
職業訓練的な意味合いで、
いろんな無駄なものが時々あるんだろうなぁ、と。

57ページの短編ストーリー。

2008年10月 2日

動機

横山秀夫「動機」。
警察手帳の一括保管を
テスト導入して間もなく、
30冊の警察手帳が盗まれた。

犯人は誰か?
内部の犯行か、外部からの侵入は可能か?

そもそも、警察手帳を盗む動機は何か。

一括保管の導入を訴えた主人公の心の動きを描写しながら、
警察手帳の一括保管に反対する者、
間もなく退官する者、新任警官、知人警官、
上司らの心に迫っていく。

警察手帳なんていうものを題材にするあたりが、
面白いです。そんなんで、話ができちゃうんだ、
っていう感じで。

68ページの短編ストーリー。



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