横山秀夫ワールド


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横山秀夫の背景

横山秀夫は記者出身の作家。鋭い視点には、その経験の濃さが垣間見られる。半落ち、看守眼、動機、クライマーズ・ハイなど、警察組織を描く表現には、彼の個性が感じられます。1957年1月17日生まれ。まだまだ色々な本を生み出してくれることでしょう。楽しみです。

2009年1月 3日

臨場(2)

横山秀夫「臨場」

終身検視官の異名をもつ人物の
短編集です。

4.餞(はなむけ)

退職まであと4日の刑事部長。
女殺しと言われ、女性にかかわる事件は、
ほとんど解決してきた。

そんな時期に、また事件が起きる。
やはり、女性が殺された事件。
未決のまま退職してしまうのか、
という心配ももたげてきたが、
「終身検視官」倉石のおかげで、
またもや、スピード解決。

解決していないのは、
毎年のように来ていた年賀状の主が
分かっていないこと。
それが、今年になってこない。

警察官にでもなれば、
更正した犯人やら、お礼参りやら、
いろんなハガキが来るもの。
そうだとしても、送り主の見当がつかない。
差出人には、「霧山郡」という記載しかない。

退職間近に、1つの決心をした。
倉石に、霧山郡エリアで、
この1年間になくなった変死体はないか、
と尋ねた。そこから、少しずつ明らかになっていく。

警察小説とは言っても、
いろんな側面から書けるもんだなぁ、
と改めて感じさせられます。

5.声

一人の女性刺殺体。
周囲には、「死ね」「死ね」と
書かれたFAXが散らばる。

事件性も考えられるその現場で、
倉石が判断したことは、自殺。

彼女の生い立ち、職場を巡る、
ストーリーが展開されていきます。

この本の中では、
一番つまらないストーリーに
思えました。

なんでだろう...?

6.真夜中の調書

DNA鑑定、血液型鑑定で
犯人を絞り込んでいく。

そこには、血液型による親子鑑定、
の神話を覆す事実があった。

B型とO型の親から、
A型が生まれる可能性がある。
それによって明らかにされた、
本当の犯人。

血液型だけでは鑑定出来ない事例が
あることを、この本で知りました。
でも、ホントなのかなぁ...

よく分からない。

7.黒星

倉石の元部下の女性が、
自殺したと思われる現場にて、
倉石が判断したのは「自殺」。

そして、事件性を確かめるために、
多くの刑事が聞き込みに出されることになった。

そこで調べようとしたことは、
何だったのか。
亡くなった女性の元同僚が、
倉石の本音を見い出そうとした。

死体にあった、不釣合いなピンクの口紅。
それは何だったのか。

自殺という判断は、初の「黒星」となるか。

人間模様の見えるストーリーです。

8.十七年蝉

17年ごとに、事件を起こしている、
と判断した倉石。

そんなわけがないと言う上層部。

17年といえば、
時効をすぎてしまい、
担当刑事たちも、
バラけているから、
見落とされやすい。

倉石が見い出した共通点は何だったのか。
そして、そこにこだわって、終身検視官を
続ける倉石の本心は?

ラストにふさわしいストーリーだと思いました。

2009年1月 1日

臨場

横山秀夫「臨場」

終身検視官の異名をもつ人物の
短編集です。

1.赤い名刺

検視担当の調査官心得一ノ瀬は、
終身検視官の異名をもつ倉石について、
検視の術を学んでいた。

1つの死体に出会い、
それが過去に自分と
不倫関係にあった女性であることを知り、
それによって、自分が容疑者リストに
あげられることを恐れた。

そんな最中、倉石から
「お前が仕切れ」
と言われる。

心の葛藤を覚えながら、
検視を進め、下した判断は、自殺。

しかし、あとになって、
心にひっかかることが出てくる。

検視官という作業だけで、
色んな情報を拾って、捜査に大きな影響を
与えるんだな、っていうことを初めて知りました。

うーん、なかなか、すごい仕事だ。

2.眼前の密室

新聞記者が取材のために、
県警本部の官舎を見張ることになる。
取材ターゲットの係長が帰ってくるのを待つが、
なかなか、帰ってこない。

近くには、ラブホテルが建っているために、
上司の奥さんとカップルを演じて、
社内で張っていた。

殺人事件は、その時に、その官舎で起きた。

自分たちがずっと張っていたために、
容疑者と呼ばれる人間が、
出入りした気配はない。

密室殺人か?

しかし、自分たちがずっと見ていた、
というところに、ヒントが隠されていた。

なかなかない視点のストーリーですね。
横山秀夫さんは、ホントに、警察事情と記者事情を
知っておられる、という気がします。

3.鉢植えの女

自殺と思われる事件が、
ほぼ同時期に発生。

終身検視官「倉石」の能力を、
それぞれの現場で、
一方は部下が、もう一方は上司が、
試すような形となる。

果たして、終身検視官の見立ては、正しいのか。
それとも、他と変わりない検視官なのか。

「やはり、ダイイイングメッセージってやつでしょうか」

「35年サツ官をやってるがな、
 死体がそんな洒落たシロモノを残したことはねえ」

というセリフが、印象に残りました。

たしかに、考えてみれば、
それもそうだな、という気がします。

殺されたとかなれば、
私は死ぬのか、みたいな感情に占められて、
メッセージを残すことに気が回るとは、
思えない。

もちろん、まったく否定することもできませんが、
この言葉も、現場を踏んでる横山秀夫さんの
発想から出てくることだろうな、という気がしました。

2008年12月 4日

クライマーズ・ハイ

横山秀夫「クライマーズ・ハイ」。

1985年、御巣鷹山の日航機事故で運命を
翻弄された地元新聞記者たちの濃密な1週間。

北関東新聞の古参記者、悠木和雅は、
同僚の元クライマー、安西に誘われ、
衝立岩に挑む予定だったが、出発日の夜、
御巣鷹山で墜落事故が発生し、
約束を果たせなくなる。

一人で出発したはずの安西もまた、
山とは無関係の歓楽街で倒れ、
意識が戻らない。
「下りるために登るんさ」
という謎の言葉を残したまま。

未曾有の巨大事故。社内の確執。
親子関係の苦悩...。事故の全権デスクを
命じられた悠木は、2つの「魔の山」の狭間で
じりじりと追い詰められていく。

事故の真相を描くと思いきや、
新聞記者の目の前に降ってきた、
生涯二度とないかもしれない事故に、
燃え上がる若手記者、全権デスクの姿に、
引き込まれました。

そして、やっぱり、
組織という壁に邪魔をされて、
主張したいものが主張できない、
しかし、それが出来ない事情も分かる苦しさ。

毎日毎日の新聞だけに、
それと向き合う記者、社員の姿の歯がゆさ。
心に迫るものがありました。

いい本だと思います。
また読みたい気持ちになりましたし...

2008年11月10日

震度0

横山秀夫「震度0」。

阪神大震災の朝、
一人の県警幹部が失踪した。
蒸発か?事件か?

錯綜する思惑と利害、保身と野心、
激しい内部抗争を背景に、県警幹部6人の
「密室劇」。

横山秀夫ファンには、
好みの分かれる作品のようです。

タイトル「震度0」が、すごいくいい気がします。

「震度0=何も無かったこと、にするにはどうすれば良いのか」

に終始する幹部たち。

組織の嫌な面を、存分に表現してくれます。
組織にはからんでいたくないなぁ、と思わされます。

ただ、ラストについては、
そういう流れになるしかないんだろうなぁ、
という気はしますが、なんかスッキリしない。

好みの問題かもしれませんね。

原則とはちょっと違った映画もあるようですから、
見てみたいものだと思います。

2008年10月29日

締め出し

横山秀夫「深追い」の中の短編。

3年間の交番勤務を終えて、
少年課への配属が決まり、
むくむくと湧き上がる黒い感情があった。

街の不良どもを締め上げてやる。
この絶対的に優位な立場で。
しかし、現実は違った。
連中は大人を恐れない。ナメ切っている。
警察官と言う立場から声を荒げれば上司が割って入る。
手でも出そうものなら弁護士が飛んでくる。
少年法の手厚い庇護の囲いの中で、
ヘラヘラ笑っている連中に、イライラする日々。

そもそも、警官になろうと思ったのは、
中3の秋に、札付きの不良だった「S」に、
彼女の前で恥をかかされたこと。

その時から、強さに飢えて、ここまで来た。
しかし、事件が起きても、事件現場から
遠いローラー捜査ばかりで、締め出される。
ある情報が手に入った。これで転機が来るのか?

39ページの短編ストーリー。

2008年10月27日

訳あり

横山秀夫「深追い」の中の短編。

上司に反発したばかりに、
突然の異動で今のポストとなった警務係長。
今やらなければいけない仕事は、
ボイラーの復旧、退職する老巡査長の職探し。

出世街道を進んでいる同期から、
本部へ戻るための手柄話を持ちかけられる。
出世の約束された25,6歳のエリート課長の身元調査。
老巡査長、自分を異動させた上司、
そして同期、エリート、自分を照らし合わせて、
警察官という人生を考えながら、
日々の仕事をこなしている。

警察官も、サラリーマン。
そんな気持ちを感じさせる話です。
大変だなぁって。

38ページの短編ストーリー。

2008年10月23日

引き継ぎ

横山秀夫「深追い」の中の短編。

泥棒専門の刑事「泥棒刑事」。
親子2代に渡って、泥棒刑事として
働いている。しかし、
検挙推進月間だというのに、
まともな泥棒はおろか万引き1匹すら
捕らえていない。

署長には責められ、
隣りの署からは、留置場がいっぱいになったから、
貸してくれなどと、屈辱的な依頼が来ている。

ターゲットは、刑務所から出てきたばかりの
ベテラン泥棒と、若手泥棒。
しかし、ベテラン泥棒の方は、
「引退します」などと全国の刑事に
手紙を送ってきた。

そんな折、泥棒事件が発生。
その手口は、ベテラン泥棒の手口そのもの。
また動き出したのか。

同じ署のなかでも、競い合いがあるなかで、
はたして、事件の犯人を捕まえることはできるのか。

泥棒も職業だとすれば、
いろんな技があったりするもんなんですね。
その特徴で、犯人を絞り込む。

同じ警察の中でも、競争ゆえに、
情報の共有化が行われないとすれば、
犯人逮捕が遅れたりすることもあるんじゃないだろうか、
なんて考えました。

37ページの短編ストーリー。

2008年10月22日

又聞き

横山秀夫「深追い」の中の短編。

15年前に溺れた小2男子を助けようとして、
二人の大学生が救助に向かった。
しかし、一人は高波にのまれ、
もう一人と、少年だけが助かった。

その少年は、15年間、
その亡くなった大学生の実家に、
「法事」として訪問している。

自分の親からは、
「救われた命」として圧力をかけられ、
亡くなった親からは、
亡くなった大学生の思い出話を毎年
聞かされる。

こんな行事がいつまで続くんだろうか、
と思った矢先、警察の鑑識係になっていた少年は、
事故の1時間前に撮影されたと言われるスナップ写真を見て、
あることに気づいた。毎年見せられていたが、
それまでは気づかなかった、その写真。
「苦しんでいたのは、自分だけではなかった。」

鑑識係が主人公という設定ですが、
何か事件が起きるわけでもない。
しかし、引き込まれます。
そして、こういう話もあるもんかぁ、
と思わされる。やっぱり、面白いです。

36ページの短編ストーリー。

2008年10月20日

深追い

横山秀夫「深追い」の中の短編。

「コンヤハ カレー デス」
事故死した夫のポケベルにメッセージを送り続ける妻。
何のため、誰のために?
過去にスピード違反車を追いかけ、
「深追い」というレッテルを貼られてしまった交通課主任が、
そのポケベルをきっかけに、また深追いをしてしまう。
その妻は、以前に交際したことのある同級生だった。
彼女にポケベルを返そうと思い会いに行くのだが、
なかなか、きっかけがつかめない。

警察組織のなかでは、また、
深追いをしている姿に受け止められている。

なぜか、返すタイミングがつかめない。
そして、次第に、真相が分かってくる...

45ページの短編ストーリー。

2008年10月16日

モノクロームの反転

横山秀夫「第三の時効」の中におさめられている短編。

一家三人刺殺事件が起きた。
5歳の子供も巻き込まれたことに、
捜査一課長は、犯人の逮捕に全力を注ぐべく、
1班と3班を、この事件に割り当てた。

いつもなら、
発生した事件の順に、
1班、2班、3班と自動的に
事件が割りふられていく。
しかし、今回は、油と水くらいのタイプが違う班を、
同じ事件に割り当てた。

コンビネーションを心配する刑事部長。
競り合えば、1+1が3にも、4にもなると期待する捜査一課長。

早速、現場押さえ、参考人押さえから、
二つの班が競り合って始まる捜査。

それぞれの班が、有力な情報に迫りながら、
分離している状態。事件は解決に向かうのか?

なんか、競り合うストーリーって、
けっこう面白く感じますね。

「第三の時効」の中では、
けっこう面白いストーリーだったと思います。

60ページの短編ストーリー。

私にとっての面白い順位。
1.第三の時効
2.モノクロームの反転
3.密室の抜け穴



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