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彼の大敵は、彼自身の芸…

彼の大敵は、彼自身の芸が
行き詰っていることである。

(藤十郎の恋、菊池寛)

芸を磨くのは、
何も芸人だけではない。

誰かの足を引っ張り
たくなった人々みんなに
当てはまる。

芸を磨かなければいけない。
そういう発想が足りないと、
何かに依存したり、
足を引っ張り始める。

うちの奥様が、
かわいそすぎて嫌いになった
子供の絵本がある。
ご存知の人もいるだろう…

「かわいそうなぞう」(土家由岐雄)
というタイトルである。
戦争中、人でさえも
飲食が大変になった時に、
動物園の動物たちに
与えられるエサも激減した。

それまでは、
観客を相手に芸さえ見せれば、
エサをもらうことが出来た象は、
そうでなくなった事態を感じて、
象なりに考えたのだろう。

さらに必死に芸をして、
エサが与えられるのを待った。
必死に、必死に、何度も、何度も
報われない芸をくり返す。

絵本を嫌いになる理由も分かる…

もちろん、
動物園の象は自分で納得して、
「芸をする道」を
選んだわけじゃないから、
「芸をする道」を選んだ人間とは
比較しようがない。

自給自足の食物作りを選んだ人以外は、
何らかの「芸」を磨いて、
その対価で口を潤す必要があるから、
最後の瞬間まで、自分を磨くのだ。

それをやめてはいけない。
行き詰った時に、
自分の「芸」以外に
責任を転嫁してはいけない。

本当の敵を見失わないように…
ありたいもの。


(参考)藤十郎の恋・恩讐の彼方に(菊池寛)

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