霊媒師といえば、故人の霊を、
自分の体にとりつかせて、
その故人の思いを、
生きている人に伝える商売。
沖縄では「ユタ」と呼ぶようです。
かみおろし、口寄せ、など、
呼び方はいろいろ。
そういうことを信じるかどうかも、
また、いろいろ。
しかし、あるところに、
ニセモノ霊媒師がいました。
ニセモノですから、
自分の身に霊を呼び寄せた振りをして、
生きた者に、思いを伝えるわけです。
それが「真実味」を帯びるためには、
その演技をする前に、
依頼人などから関係する情報を
聞き出さなければなりません。
いかにも、という具合でなく、
自然に聞き出す、
依頼人からの良き聞き手となる。
だいたい、そういう依頼をする人々は、
心が飢えているはずですから、
助言が必要なのと同時に、
受け入れてもらいたい気持ちも
強く持っているもの。
話術が巧みであればあるほど、
かなりの情報が得られます。
そして、いざ、
霊媒術を行っている演技が
スタート。
ニセモノ霊媒師は、
そういう具合にして、
幾多の経験を経て、
「あの人は、ホンモノだ。」
と言われるまでに有名な存在になりました。
しかし、ニセモノであることを知るのは、
いっしょに商売をしているパートナー1人だけ。
あとは、誰一人知らない。
いくらかは他人の役に立ちたい、
と思って、それをやっているわけですから、
悪徳商法などと言われて訴えられたこともなく、
順風な商売となっていました。
ある日、ニセモノ霊媒師は、
耳元でピキっと感じます。
何かしら、体に異変が起きたような気がしました。
しかし、その後は、
なんともありません。
おかしいなぁ、と思いながら、
いつもどおり、仕事を始めることにしました。
依頼人の話を聞いて、
頭の中で、どういう演技をするか、
構想を整えているうちに、
何かしら、いい気分になってきて、
ふと「今日を最後にしようかな」
と思うようになりました。
周りの段取りを整えているパートナーに、
何気なく、そのことを言うと、
えっ!と驚きはしたものの、
それもいいかもしれない、
とすんなりと了承してくれました。
さて、演技のスタートです。
お決まりの文句を唱えながら、
ニセモノ霊媒師は、
霊が身体にとりつく演技をしています。
パートナーは、それを見ていて、
ん?今日は気合が入っているな、
と感じるほどの熱気を感じました。
身をもだえたり、声をあらげたり、
いかにも苦しそうです。
そして、バタと倒れました。
こんな演技は、今までなかったなぁ、
と思っていると、ニセモノ霊媒師は、
体を半分起こしたかと思うと、
「申し訳ありません。
今日依頼された方の霊を、
身体に引き寄せることが出来ませんでした。
お代はお返しします。
たいへん失礼しました。」
あまりの長く、迫力ある演技だっただけに、
依頼人たちは、驚きながらも、
その言葉を了承しました。
何かあったのか、と思い、
パートナーはあわてて、
ニセモノ霊媒師の近くに
走っていきました。
「どうしたんだ?」
小声で尋ねます。
「はじめて、本当の霊媒が成功した。」
ニセモノ霊媒師が言います。
「なに? さっきは、できなかったと言ったじゃないか。」
「違う、その方の霊のことではない。」
「私の霊だ。」
「え? おまえの霊?」
「私に、初めて見えた。
霊が身体に引き寄せられるのを…
そして、私が2時間ほど前に死んでいたのが分かった。」
「おかしなことを言うんじゃない。
おまえは、生きているじゃないか。」
「いや、私をさわってみろ。」
パートナーは、恐る恐る触る。
「ひゃっ!」
あまりの冷たさに、身をひいた。
「死んでいるからだ。
しかし、霊媒術によって、
私の死んだ体に、私の霊がとりついている。
初めて成功したんだ。笑える話だが…」
「そうか、よかったな。」
「ああ、ありがとう。
これまで、本当にありがとう。」
そして、ニセモノ霊媒師は、バタっと倒れた。
もちろん、その体は、すでに冷たく、死んでいた。
ニセモノ霊媒師が初めて成功した霊媒術。
それは、自分の霊を呼び寄せたこと。
知る者は、そのパートナー以外、誰もいなかった…
------おわり------
というのが、おとといの晩に見た夢でした。
私が出てくるわけでもない。
ただ、そういうシーンを、
どこからか観察している夢でした。
何の意味がある夢だというのでしょう。
今なお、不思議ですが、
記憶だけは留めておこうと思って、
ここに書いています。
いつか分かるかもしれませんが…